オルニチンの効果ガイドブック

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しじみのオルニチンの役割




1.しじみのオルニチンとはどんな成分?

しじみには、オルニチンと呼ばれる栄養素があります。
オルニチンはテレビや新聞、雑誌などでオルニチンの広告をよく目にすると思います。
この時必ずと言っていいほど、「しじみ●●●個分のオルニチン」といった形で紹介されるほど、しじみを特徴づける栄養素です。
しかし、オルニチンと言ってもビタミン類やミネラルと違い、普段耳慣れない成分なのでどのような物質で、どのような効果があるのか広告上の説明はほとんどありません。
今回は、しじみに含まれるオルニチンについて、初めての方でも分かりやすいようにご紹介します。

2.オルニチンとは?

オルニチンはアミノ酸の1種です。
私たちの体はたんぱく質でできていますが、そのたんぱく質を作るのが9種類の必須アミノ酸と、11種類の非必須アミノ酸です。
必須アミノ酸は体内で作れないアミノ酸で、非必須アミノ酸は必須アミノ酸を基に体内で生産できるアミノ酸です。
しかし、オルニチンはこれららのアミノ酸の中には含まれていません。

必須アミノ酸も非必須アミノ酸も、他のアミノ酸と結合し、他の物質になることではじめて何かしらの機能を持ちます。
一方、オルニチンは単独でも人体に作用する「遊離アミノ酸」に属します。
オルニチン以外に知られている遊離アミノ酸として、タウリンやシトルリンなどがあります。

3.オルニチンの役割

オルニチンを紹介する広告では、疲労や二日酔いの回復を匂わす表現がなされていますが、実際にどのような理由で疲労や二日酔いに効果があるかは分かりません。
また、サプリメントで販売されるビタミン類や、ミネラルなど一般的な栄養素と違い、オルニチンに対する詳しい情報は余り多くありません。
実はオルニチンは体内で発生する有害なアンモニアを無毒化する際に、必要不可欠な栄養素です。
オルニチンが無ければ、私たちは生命を維持できません。
まずはなぜ体内にアンモニアが発生し、どうして有害なのかをお話します。

3-1.アンモニアの毒性

アンモニアは最も単純な窒素化合物です。
そして、私たちが食事で摂り、私たちの体を構成するたんぱく質もまた窒素化合物です。
食物の摂取や、体の細胞のたんぱく質が分解されると、その副産物としてアンモニアが生産されます。

トイレの臭いで知られるアンモニアは、実は法律で劇物に指定されるほど人体に有害な成分です。
アンモニアは非常に小さな物質なので、簡単に細胞の中に入り込みます。
そして、細胞の中に入ったアンモニアは、細胞内でエネルギーを生産するミトコンドリアの活動を阻害します。
ミトコンドリアでエネルギーが生産されなくなると、私たちは疲労を感じ、それが蓄積していき、遂には動けなくなってしまいます。
また、脳や神経細胞に侵入すると、細胞の機能を麻痺させます。
その結果、意識障害や神経障害など引き起こします。

3-2.オルニチンとアンモニアの無毒化

体内で発生したアンモニアは人体に有害なので、何らかの方法で処理が必要です。
その処理に使用されるのが、肝臓にある尿素回路と呼ばれるシステムです。
体内で発生したアンモニアは、血液で肝臓に集められます。
そして、尿素回路で代謝※1され、最終的に無害な尿素となり、腎臓に運ばれて尿と共に排泄されます。
この尿素回路でアンモニアの処理に使用されるのが、しじみのオルニチンです。
その重要性から、尿素回路を別名「オルニチン回路」とも呼びます。
※1 代謝とは、物質を化学反応で性質の異なる物質に変えること。

3-3.オルニチンが不足すると

オルニチンは、尿素回路に必要不可欠な成分です。
もし、オルニチンが体内に十分にない場合、肝臓に集まってくるアンモニアの処理がオルニチン回路で間に合わず、肝臓にアンモニアが充満してしまいます。
肝臓にアンモニアが充満すると、肝臓の細胞内にあるミトコンドリアの活動を阻害します。
肝臓の細胞内のミトコンドリアは、肝臓へのエネルギーの供給源なので、肝臓はエネルギー不足に陥ります。
肝臓は1つの臓器で生命維持に必要不可欠な500種類以上もの役割を果たす、重要な臓器です。
肝臓のエネルギーが不足すると、これらの他の機能も麻痺し、体に様々な不調をきたします。
また、肝臓は体全体のエネルギーを生産する場所です。
アンモニアが肝臓に充満するとエネルギーが生産できなくなり、これが疲労の原因となります。

3-4.オルニチンと肝臓の関係

オルニチンは尿素回路で非必須アミノ酸のアルギニンを代謝することで生産が可能です。
しかし、アルギニンでオルニチンを生産するには酵素が必要です。
肝臓は加齢により、酵素の生産力が低下していきます。
酵素の生産力の低下で、アルギニンでオルニチンを十分に生産できなくなると、尿素回路でアンモニアの処理が十分にできなくなります。
そのため、肝臓で酵素の生産力が落ちた分だけ、オルニチンを単独で含有するしじみなどの食品から補う必要があります。
しじみでオルニチンを補うと、尿素回路が活性化し、アンモニアの処理が促進され、肝臓の他の機能も活性化します。
その結果、疲労が回復するだけでなく、体の様々な不調も改善されます。

3-5.オルニチンと二日酔いの関係

オルニチンが二日酔いに効果があると言われている理由も、実はアンモニアの無毒化と関係します。
人体はアルコールを毒として認識します。
お酒などでアルコールを摂取すると、消化器官で吸収され、血液を通じて肝臓に運ばれて無毒化されます。
アルコールを無毒化する過程で、アセトアルデヒドと呼ばれる非常に毒性の強い成分が生成されます。
そのため、肝臓はこのアセトアルデヒドの無毒化に集中してしまい、他の機能が疎かになります。
当然、他の酵素の分泌や、尿素回路の機能も低下します。

しかし、アセトアルデヒドを無毒化している最中も、体中からアンモニアが肝臓に届けられます。
尿素回路の機能が低下しているので肝臓にアンモニアが充満してしまい、肝臓がアンモニアの毒素に侵された状態になります。
その結果、肝臓の機能がさらに低下し、二日酔いの疲れの原因となります。

しじみでオルニチンを摂取すると、尿素回路が活性化し、アンモニアの処理が高まります。
その結果、アンモニアの毒で侵されていた肝臓の機能が活性化し、アルコールの処理速度も早まります。
オルニチン自体はアルコールの分解に直接作用しませんが、有毒なアンモニアの処理を活性化することで肝臓が活性化し、アルコールの処理が早まります。

4.オルニチンとクレアチン回路

人体には代謝経路と呼ばれる、様々な化学反応を起こすシステムが存在します。
クレアチン回路も、その代謝経路の1つで、筋肉で爆発的なエネルギーが必要な時に使用されるクレアチンを生産するシステムです。
オルニチンは、このクレアチン回路を構成する成分の一つで、アルギニンからクレアチンを代謝する過程でもオルニチンが生産されます。

5.オルニチンは成長ホルモンの分泌を促進

成長ホルモンは、体の新陳代謝や傷の修復に必要不可欠で、生涯に渡り分泌されるホルモンです。
しかし、成長ホルモンは第二次性徴をピークに加齢と共に分泌が減少します。
成長ホルモンの分泌が減少すると、新陳代謝が不活性となるので老化が早まり、傷の治りも遅くなります。
また、成長ホルモンが分泌されないと、運動をしても筋肉が増えなくなります。

オルニチンは、この成長ホルモンの誘導体として作用します。
2010年、ポーランドで行われたアルギニンとオルニチンを配合したサプリメントを3週間服用した二重盲検試験※2では、アルギニンとオルニチンを摂取した被験者に明確な成長ホルモンの増加が認められています。
※2 二重盲検試験とは、被験者を2グループに分け、一方に試験の対象となる薬を、もう一方に偽薬を投与して行う実験。検査側にもどちらに試験薬が投与されているかは分からない状態で検査します。

6.しじみのオルニチン含有量

オルニチンはアミノ酸なので、たんぱく質を含む食品に存在しますが、ほとんどの食品で含有しないか、含有していてもほんの僅かな量です。
しじみはオルニチンを、100gあたり10.7~15.3mg含有しています。
これはオルニチンを含有する食品の中でも、飛びぬけた数字です。

オルニチンは非必須アミノ酸のアルギニンを代謝することで体内でも生産が可能なため、明確な摂取基準は設けられていません。
オルニチンは、一般に成人1人あたり1日に400~1000mgが必要と言われています。
しかし、加齢とともに肝臓の機能が衰えると、アルギニンからオルニチンを代謝する能力も衰え、体内で必要な量をまかなえなくなります。
しじみのようにオルニチンを単独で含有する食品を摂取すると、肝臓の尿素回路が活性化し、疲労回復や健康維持に効果を発揮します。

7.まとめ

しじみが含有するオルニチンは遊離アミノ酸の一種で、他のアミノ酸と異なり単体で体の健康に作用する効果があります。
オルニチンの最も重要な役割は、人体に有害なアンモニアの処理です。
オルニチンは肝臓に運ばれる有害なアンモニアを、無毒化する尿素回路を構成する重要な成分として作用します。
アンモニアを処理すると、肝機能が高まり、疲労や体調が回復します。
また、オルニチンは成長ホルモンの分泌を促進する作用もあり、新陳代謝や筋肉の増量効果を高め、老化防止や健康維持に役立ちます。
オルニチンは、非必須アミノ酸を体内の尿路回路やクレアチン回路で代謝すると生産できますが、加齢と共に生産力が低下します。
しじみのように、単独でオルニチンを含有する食品で補うのが効果的です。
しじみのオルニチンは、肝機能や健康の維持に必要不可欠な栄養素です。

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